紙おむつはリサイクルの時代へ!「紙おむつの資源化を考えるシンポジウム」レポート

王子ネピアでは、紙おむつを作るメーカーの責任として、かねてから紙おむつの再資源化について考え、
2015年3月の「第1回/紙おむつの資源化を考えるシンポジウム」をかわきりに、このテーマに向き合ってきています。以下、シンポジウムの様子をレポートします。

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第1回/紙おむつの資源化を考えるシンポジウム とき:2015年3月19日/ところ:東京TFTビル

王子ネピアでは、2015年3月19日、東京のTFTビルにて「紙おむつの資源化を考えるシンポジウム」を開催しました。全国から100名を超える参加者が会場を埋め、7名の登壇者による講演のあと、参加者からの質問を受けながらパネルディスカッションが行われました。会場に充満していたのは、使用済み紙おむつ処理問題は待ったなし、という危機意識でした。講演とパネルディスカッションの内容をダイジェストでお伝えします。

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ごあいさつ

シンポジウム開催の意義について

王子ネピア株式会社 社長/清水紀暁

このたび、多くの方々のご協力、ご賛同を得まして、このようなシンポジウムを開催させていただくことができました。また、たいへん多くの方にお集まりいただき、感謝申し上げます。
紙おむつは、1970年代に普及し始めました。いまでは子育て、介護になくてはならないものとしてご使用いただいておりますが、一方では、ゴミの処理というやっかいな問題に直面しております。日本はもちろん、世界中がこの問題に頭を痛めているのが現状です。弊社は紙おむつメーカーとしてこの問題と向き合い、真剣に考えてまいりました。

シンポジウム開催の意義について 講演の様子

王子ネピア株式会社 社長/清水紀暁

このシンポジウムでは、7名の方に、それぞれのお立場から貴重なお話を聞かせていただき、私たちも勉強させていただきたいと思っております。使用済み紙おむつを安全に衛生的に処理し、燃料として再利用する仕組みをご理解いただけたらと考えております。

講演会

社会が抱える紙おむつゴミ問題とリサイクルのシステム

広島工業大学・中山勝矢名誉教授

社会が抱える紙おむつゴミ問題とリサイクルのシステム 講演の様子

広島工業大学・中山勝矢名誉教授

使用済み紙おむつは、日本ではおもに焼却処分されていますが、これにより大きな問題が生じています。高分子吸収材が多量の水分を吸っているので、焼却炉内の温度を低下させるのです。
当然、燃えにくくなりますから、化石燃料を助燃剤として使い温度を上げる。しかし紙おむつは乾燥して、ひとたび燃え始めると高カロリーなので一気に炉内の温度を上げてしまいます。実はこの温度差こそが焼却炉を傷め、短命にする要因となっているのです。いま日本に1600あるゴミ焼却炉のうち2~3割が3年以内に寿命を迎えると言われます。税金で再建することになるわけですが、紙おむつを燃やすという処理方法はもう限界に来ています。

その大問題を解決してくれるのがSFDシステムです。使い捨てでなくリサイクルして燃料化し、少しでも資源を使わないようにする。これは21世紀以降の人間の生き方の基本です。それを実現させたSFDシステムに期待したいと思います。

SFDシステムの仕組みと今後の展望

株式会社スーパー・フェイズ 木村幸弘社長

便利なものというのは、ときとして厄介なものになる。紙おむつもその1つであろうと思います。昨年、紙おむつの生産量は大人用70億枚、子ども用107億枚で、使用済みとなると重くなり、重量換算では、それぞれ140万t、120万t、計260万tとなります。この重さはレジ袋4年分強の生産量に匹敵する数字です。年間260万tもの使用済み紙おむつは、化石燃料を使って焼却処分されている。CO2減少が叫ばれている時代に、明らかに逆行しています。

SFDシステムの仕組みと今後の展望 講演の様子

株式会社スーパー・フェイズ 木村幸弘社長

この問題を何とかしなければならない。そういう問題意識で、私はSFDシステムを開発しました。使用済み紙おむつを、破砕し、乾燥させ、滅菌して、燃料化する。このリサイクルを自治体が自ら率先して導入し、エネルギーの〝地産地消〟を図る。また民間の介護施設なども独自に導入して企業の社会的責任を果たす。
いま、問い合わせは海外からも多数いただいています。紙おむつは、SFDシステムにより、地球を救う燃料になると確信しています。

SFDシステムとは?(ケア通信第9号より抜粋)

SFDシステムとは、株式会社スーパー・フェイズが開発した使用済み紙おむつを燃料化する画期的装置だ。
そのメカニズムを解説しよう。

ポリ袋におむつを入れたままプラントに投入。あとは全自動で処理する。
最初の工程は、撹拌(かくはん)羽根と破砕刃によるおむつの破砕である。これにより、高分子ポリマーに閉じ込められた水分を乾燥させやすくすると同時に、温風加熱により乾燥させる。 さらに長時間にわたり高温殺菌を施し、おむつに付着した便や尿の感染性を除去する。 処理中に発生するニオイについては、発酵技術の応用により、発生を抑制した上で、プラチナを触媒にした方法で脱臭する。

SFDシステムの仕組み

この段階で、おむつの重量と容量はプラントへ投入する前の3分の1、水分も10%未満に減少。形状はティッシュを細かく ちぎったような状態で、このままでも燃焼は可能だが、成形機でペレット化すると、体積はプラント投入前の約11%まで圧縮できる。パルプ含有率が60%以上なのでバイオマスエネルギーだ。 専用のボイラーを導入すれば、5000kcal/㎏の熱量が得られる。木質ペレットよりも1000kcal/㎏高い熱量だ。これでエコリサイクルが完成する。
「大型SFD機のランニングコストは、メンテナンス費用込みで20〜22円/㎏です。多くはガスと電気代。今後高騰する処理費と比べれば経済効果を十分期待できます」と、スーパー・フェイズの木村社長は語る

SFDシステムは、大型機、中型機、小型機の3種類。施設や自治体からの問い合わせが増えている

伯耆町における使用済み紙おむつ燃料化事業

鳥取県伯耆町 森安保町長

伯耆町は人口1万1000人余り、高齢化率33%の町です。病院と福祉施設(計400床弱)、保育所から出る紙おむつ400~500㎏/日を、2011年から導入したSFDシステムで処理しています。事業者には、10㎏入る専用収集袋を50円で買ってもらい、毎日収集しています。
2014年から専用ボイラーも導入し、ペレット化した燃料を町営温泉施設で活用し、サーマルリサイクルを完成させました。処理された生成物は当初、焼却施設の助燃剤として使った際には、重油の量を3分の1(年間150万円弱)節約できましたし、町営温泉の熱源として使用し始めてからは、LPGを年間260万円ほど節約できました。

伯耆町における使用済み紙おむつ燃料化事業 講演の様子

鳥取県伯耆町 森安保町長

ボイラーにかかった費用は3000万円ですから、10年強でペイできるでしょう。あとはCO2排出権取引などをからめれば、さらに早く経費を回収できるでしょう。自治体なので地方債などを活用していますが、焼却施設の延命化によるメリットなどを含めて、全体として、納得いく結果を得られています。

SFDシステム導入で、行政と連携し資源循環の実現へ

社会福祉法人「勇樹会」 中野勇理事長

SFDシステム導入で、行政と連携し資源循環の実現へ 講演の様子

社会福祉法人「勇樹会」 中野勇理事長

SFDシステムのことを知ったのはテレビ番組でした。勇樹会は新潟市内に多数の老人介護施設と保育園を運営しており、1日500㎏の紙おむつのゴミが出ます。いまは1㎏約30円の回収料金ですが、年間500万円以上の経費がかかっている。SFDシステムによって、紙おむつを処理してペレットを生成し、それを介護施設の風呂や保育園の温水プールで燃料として使えば、経費を削減できます。

ただ、導入には土地や建屋などを含めると億単位のお金がかかります。新潟市は、我々が導入してうまく行けば、そのデータを基に動こうと考えています。佐渡島にも私どもの施設がありますが、ゴミは島外に持ち出せないので、SFDシステムに期待しています。新潟市、佐渡市を巻き込みながらやっていく。大変ですが、何としてでもやらなければいけないことであります。先日、孫に手紙をもらいました。「後ろを向くな、前を向くな。いまを見なさい」と。目の前の仕事に命がけで取り組んで行けば先は必ず見えてくるということでしょう。今年秋の導入をめざします。

富良野市の導入に向けた取り組みと、今後の広がり

北清ふらの株式会社 中野勉社長

北海道富良野市は、観光で有名でもあり、スキーのワールドカップが開かれるなど、国内外からお客さまが訪れることもあって、環境に熱心な自治体です。住民の意識も高く、ゴミのリサイクル率は全国でトップクラスの93%。
混ぜればゴミ、分ければ資源」をモットーに、さらなるリサイクル率アップのため、難しかった衛生用品のリサイクルにも取り組み始めました。紙おむつだけでなく、生理用品、ペットシート・砂が対象で、これらは年間553tにのぼります。

富良野市の導入に向けた取り組みと、今後の広がり 講演の様子

北清ふらの株式会社 中野勉社長

そこで注目したのがSFDシステムです。伯耆町に見学に参りましたところ、完成度が高く、ポリ袋のまま投入できて、操作が簡単。
すべてにおいて信頼できる装置と判断し、富良野市に報告。2013年、富良野市からの委託事業者として試験導入にかかわっています。夏30℃、冬は零下20℃になるなど気温差が大きいため、夏と冬に実験を行った結果、すべての項目で満足のいく数字があがりました。市内の介護事業者などのSFDシステムへの関心は高く、何とか正式に導入し、リサイクル率97%をめざしたいと考えております。

再生可能エネルギー問題は、まずは私たちの足元から

地域婦人連絡協議会 田仲則子栃木県事務局長

SFDシステム導入で、行政と連携し資源循環の実現へ 講演の様子

地域婦人連絡協議会 田仲則子栃木県事務局長

いまや紙おむつは便利で、育児・介護になくてはならないものになっております。お陰で外出も楽しめるようになりました。しかしゴミ処理のことを思うと、放置できない問題であり、社会全体で考えるべきテーマであると認識しておりました。
 そんなときSFDシステムの存在を知りました。使用済み紙おむつを処理して、燃料にする。この画期的な装置に驚きました。と同時に、この装置を周知させたいと考えました。そこで450万人の読者がいる全国地域婦人団体連絡協議会の機関誌に、SFDシステムについて書いた文章を投稿しました。さらに昨年秋の関東甲信越ブロック会議を栃木県で開催した際も、再生可能エネルギー問題をテーマに掲げ、スーパー・フェイズ社の木村社長にご講演をいただいたのです。「ただのゴミから、地球を支える燃料へ」という言葉に大きな反響がありました。

私たちは住民運動として、生活者の理解と意識改革を図り、他方では行政に対してSFDシステムが広まるよう働きかけていきたいと考えております。

我が国における3R政策の推進とリサイクル産業への期待

経済産業省産業技術環境局 リサイクル推進課 酒井崇行課長補佐

我が国は、環境制約と資源制約の克服に向けて、大量生産・大量消費・大量廃棄物の経済社会から、3R(スリーアール)政策を通して、環境と経済を統合した持続可能な発展を指向する「循環型社会」をめざしています。3Rとは、リデュース(Reduce)、リユース( Reuse) 、リサイクル(Recycle)です。1971年に廃棄物処理法が施行されて以降、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法、自動車リサイクル法、食品リサイクル法、さらには資源有効利用促進法や循環型社会形成推進基本法なども施行され、改正・改訂されてきました。

我が国における3R政策の推進とリサイクル産業への期待 講演の様子

経済産業省産業技術環境局
リサイクル推進課 酒井崇行課長補佐

これからは、リサイクルを1つの産業としてどう支援していくかも課題です。さらに今後、高齢化社会においてより重要度が増す使用済み紙おむつリサイクルに資する、画期的な取り組みについても発展を期待しています。厳しい地方財政の中で、処理コストのかからない方法を模索する。そうしたチャレンジを、省としてどう支援すれば効果的かを考えてまいります。

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、7名の講演者の方が会場の皆さんからの質問に答える形で進行し、熱心な議論が交わされました。一例をご紹介します。

Q.使用済み紙おむつはいま一般廃棄物として処理されているケースが多いが、今後、産業廃棄物指定になるのでしょうか? 酒井さん、いかがでしょうか?

酒井氏

残念ながら、経済産業省の立場ではお答えできかねる問題です。廃棄物処理法を所管しているのは環境省だからです。その先は自治体が決めることになっていますが、ともかく廃棄物処理法の運用の問題であろうと思います。経産省としては、環境省にこの件を問題提起していきたいと思います。

木村氏

ある自治体の例ですが、100床ある介護施設では1日140~150㎏の使用済み紙おむつが出る。
1㎏=200円かかっています。(会場から「エッ」という声)

森安氏

家庭で介護される中で発生したゴミだから、やはり一般廃棄物だろうと思います。いっぽうで、介護施設の場合は産業廃棄物にするという、ダブルスタンダードは通じないだろうと思います。これは自治体の長である私の考え方です。違う意見を持つ首長もいるでしょう。
ただ確実なのは、この問題は必ず深刻化するということ。紙おむつの市場は年7%ずつ伸びていますからね。介護事業者から発生する紙おむつは自らの手でやりなさいという言い分はこれまで以上に出るでしょう。でもそれで幸せですかと聞きたい。そこからが知恵の出しどころ。こういうシンポジウムの場を今後も定期的に開いて、メーカー、施設、回収事業者、自治体、みんなが知恵を出しあえばいい。私見ですが、可燃ゴミとして収集しやすい状態にするということを当面の目標としてはどうかと考えています。そうすれば助燃剤として使える。それができたら、さらにボイラーでサーマルリサイクルに持って行く。そういう段階設定がいいのではないかと思います。

Q.伯耆町の事業者からの反応はどうでしたか?

森安氏

導入実験の段階では、面倒くさいなという反応でした。しかし少しすると慣れてきた。しかも毎日収集するので介護事業者からは評価が高いです。以前焼却ゴミとして負担していただいていた額より少し下がるぐらいで、あとは税金で補填できるので、事業者としては有利になったと思っています。家庭用の紙おむつへのニーズも高いですが、分別のレベルがいまひとつなので、躊躇しています。

パネルディスカッションの様子

紙おむつリサイクルをビジネスの観点から

王子ネピア株式会社 取締役・ケアサポート事業本部長(現参事)/須東亮一

紙おむつリサイクルをビジネスの観点から 講演の様子

王子ネピア株式会社 取締役・
ケアサポート事業本部長(現参事)/須東亮一

きょうはご多忙のなか、全国からこれだけ多くの方にお集まりいただいたこと、たいへん心強く思いました。ありがとうございます。エネルギーの地産地消を、今後ももっと積極的に広めていこうと考えた次第です。

私たちの基本姿勢は、紙おむつリサイクルをビジネスの観点から進めていくということです。きょうお話いただいた中には、実際にSFDシステムを活用されている事例もございました。これらは貴重なヒントになります。みなさまもここで得た情報をぜひビジネスに結び付けて生かしていただきたい。また、これからも、みなさまとともに、知恵を出し合い、環境問題に取り組んでまいりたいと考えております。