東ティモール視察レポート

視察レポート2019

12年目を迎えるnepia 千のトイレプロジェクト。これまでの成果と、これからの課題。

支援の前と後、2つのコミュニティへ。

今年で12年目となるnepia 千のトイレプロジェクト。2年ぶりの視察では、2つのコミュニティを訪問しました。
1つ目はトイレづくりを完了したブサダオ集落、もう一つは支援実施前のバリケ村。2つのコミュニティで、トイレができてどのように生活が変化したのか、また、トイレがないことでどういった問題が起きているのか、プロジェクトの成果と課題を確認することが、視察の目的です。

ユニセフ・現地NGOスタッフとともに視察を行いました。

大切なのは、村の人たちの意識を変えていくこと。

最初に訪れたブサダオ集落はODF(屋外排泄根絶宣言)が終わっており、すべての家庭にトイレの設置が完了していました。
支援中に行われたトリガリングでは、「MAPA」という集落全体の排泄状況がわかる地図を描いて、村の衛生状態を把握。さらには、病気の感染経路を確認することで「トイレが必要だ」という衛生意識を高め、屋外排泄根絶に努めました。

以前は茂みで用を足していたというバスコ・ド・カルモさん。「特に子どもたちにとって、糞尿がどれだけ有害なのかをプログラムで学びました」

アントニーナ・カルドーゾさんは「外で用を足さないで済むことが嬉しい」と語ってくれた。

基礎づくりからしっかりと行ったトイレ。バケツには常に水を溜め、排泄物を流せるように。

「一番難しかったのは、意識の変化を促すことでした」と支援を行ったNGO「HIM」のロドリゲスさんは語ります。それでも、時間をかけてあらゆるプロセスを経ることでトイレの必要性への気づきを与え、理解、自立へとつなげていきました。

プロジェクト開始前までは、屋外排泄に対して違和感を抱かず、多くの家庭でトイレのない生活を当然のこととして受け入れていたそうです。その結果、雨などによって家の軒下まで排泄物が流れ、下痢などの病気が頻繁に起きていました。しかし、プロジェクトを経た今では「トイレができて嬉しい」「お腹が痛くなることが少なくなった」と全ての村人が自分たちのトイレを誇らしく語るまでになりました。

「トイレづくりはコミュニティの協力が不可欠」と語るNGOスタッフのロドリゲスさん。

小学校で「おうちにトイレがある人」と聞くと「はーい!!」と一斉に手が上がった。

支援前の農村部の実情。

次に向かった集落は、今後のプロジェクトの支援対象となるバリケ村でした。バリケ村は160世帯と、ブサダオ集落の3倍以上の大規模なコミュニティですが、半数の人々がトイレを持っておらず、さらに7割の人が屋外排泄を行っている現状があります。

また、バリケ村を訪れる際には、2週間前の土砂崩れの影響で村へと続く道が塞がり、車を残し徒歩で1時間かけて到着するというトラブルが発生。さらに村の中は1カ月もの間停電した状況にあり、衛生環境だけでなく、インフラの不備という東ティモール農村部の実情を目の当たりにしました。

土砂崩れで崩壊した道。補修の目処も立っていないという。

若き村長のフランシスコ・ダコスタさん。村の課題を真摯に語ってくれた。

一方で、この集落はすでに地域NGOとユニセフの支援対象地域に指定されており、少しずつ衛生環境への考え方に変化が起きていました。「トイレを持っていない人々も、衛生環境に良くないという意識はある」と村長のフランシスコ・ダコスタさんは語ります。資材の調達に苦慮していること、浄水加工もせず水を飲まざるを得ないことなど、私たちは、村長、村の人々との対話の中で課題を共有し、さらなる支援の必要性を強く実感しました。

村の集会所で村長・村の人達を交えてミーティングを実施。

子どもたちが、安心して遊べる環境に。

2つの集落を訪れて、どちらも子どもたちが楽しそうに遊んでいる姿が印象的でした。一方で、最初に訪れたブサダオ集落の集落長からは「トイレがなかった時は、感染症で子どもたちの小さな命を失った。また、病気にかかる人も多かった」とお話を伺い、この国の抱える問題の深刻さ、プロジェクトの重要性をあらためて認識しました。

2008年からの支援活動によってつくられたトイレは約20,000基。東ティモールの衛生環境は着実に改善していますが、まだ道半ばです。
日本でネピアを選んでくださるみなさまの想いを、しっかりとトイレづくりにつなげ、たくさんの命を守っていきたい。プロジェクトチーム一同、次の年へ向けて、気持ちを新たにする視察となりました。
今後とも、nepia 千のトイレプロジェクトへの応援を、どうぞよろしくお願いいたします。

トイレづくりのプロジェクトを進めたメンバー・ブサダオ集落の人たちと。